この記事では、黒澤明監督の第28作品目の映画『夢』のあらすじと映画の解説をご紹介します。
1990年に公開された『夢』。
この映画はスピルバーグとジョージルーカスの支援なくしては完成しなかった作品とされています。
それでは、黒澤明監督の作品を40年間のこよなく愛し続けている筆者が『夢』のあらすじと映画の解説をご紹介しますね。
『夢』あらすじ
黒澤明監督の『夢』は、『第一話 日照り雨』『第二話 桃畑第三話』『雪あらし』『第四話 トンネル』『第五話 鴉』『第六話 赤富士』『第七話 鬼哭』『第八話 水車のある村』という8話のオムニバス形式の作品となっています。
第一話と第二話では黒澤監督自身の幼少時代が描かれており、過ぎ去った懐かしい日々を振り返る内容となっています。
また第三話は民話の雪女から発想を得た作品となっており、第四話で描かれている戦争は、自身が青春時代に体験した戦争という悪夢が、今だに自分を苦しめているということを現しているように感じられます。
また自分だけが徴収を免れ、多くの友人が戦死したいう事実を前にしたどうしようもない罪悪感から生まれた作品とも言えます。
第五話の鴉には、あのゴッホの有名な絵画が数々と登場します。
黒澤監督自身、ゴッホの絵の影響により画家として開花したと語っているほど感化されており、その想いがこの作品に溢れています。
第六話、第七話は黒澤監督の原子力、先端科学への将来における危機感を現しています。
「生きものの記録」以来、黒澤監督作品の主要テーマが原水爆問題がでもあると言っても過言ではありません。
第八話では、黒澤監督自身の死生観が現れており、このような陽のさんさんとあたる明るい村でみんなに祝福されながら陽気に死にたいという強い気持ちが表現されています。
また第六話「赤富士」ではで原発への警笛を鳴らし、まるで未来を予見しているような作品となっています。
赤富士でには、富士山が噴火して原発が爆発して人々が逃げ惑うシーンがあります。
その時、逃げ惑う人々の中の一人である女性が、「原発は安全だ!危険なのは操作ミスで、原発そのものに危険はない。ミスも侵さないから安全だ!と言ったやつは誰だ!許せない!」というセリフを語っています。
これは、まるで2011年3月11日に起きた東日本大震災の福島の原発事故を指しているようでもあり、ネット上では「黒澤監督は将来起こる原発事故を予見していた!」と噂になり話題になりました。
『夢』解説
黒澤明監督の夢は、文字通り夢を題材にした8つのエピソードからなる、ファンタスティックなオムニバス映画であり、カンヌ国際映画祭でオープニング上映された記念べき作品でもあります。
この作品はスティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスの資金援助を受けること意により制作することができました。
そのため、映画の配給権は、ワーナー・ブラザーズに渡ってしまい、当時は日本では自由に上映することが出来ない状況となってしまいました。
また国際映画祭ではオープニング上映されるという快挙を成し遂げた作品でもあります。
さらに、この映画の第五話「鴉」では、ゴッホ役を「タクシードライバー」「レイジング・ブル」の監督・マーティン・スコセッシ氏が演じています。
つまりこの『夢』には、アメリカ映画界の3人巨匠が参携わっている、黒澤監督にとって記念碑的な作品ともなっています。
黒澤明監督という映画監督の偉大さが改めて感じられた作品でもあります。
その後「影武者」という映画ではフランシス・フォード・コッポラが外国版プロデューサーとして参加しており、70年80年代以降を牽引してきた代表的な映画監督たちへ、黒澤明監督が与えた影響の凄さを改めて感じます。
『夢』感想
『夢』はもしかしたら退屈だと感じる人にはとにかく最初から最後まで退屈な作品かもしれません。
ただし、タルコフスキーなどが好きな人にとっては、とことんツボにはまる作品であるとも言えるでしょう。
私自身『夢』は画家黒澤明監督が作る最高の美術映画だと思いました。
ただ見事な映像群だけで充分「生」や「死」などを表現できているのに、登場人物達が少ししゃべり過ぎな気もしました。
黒澤監督映画では「水爆」「戦争」や「近代化」などの話題にになると、どうしても諭されているように感じてしまいます。
タルコフスキーの映像美が一言でいうと「静」であるのに比べ、黒澤監督の映像美は「動」であるとも言えます。
作品全体が力強い命のエネルギーでギラギラしており、そこが黒澤監督作品の魅力であることも確かなようです。
『夢』まとめ
黒澤明監督の第28作品目の映画『夢』のあらすじと映画の解説をご紹介しました。
スピルバーグとジョージルーカスの支援なくしては完成しなかったとされる『夢』。
『夢』の制作費は$12,000,000。
当時は1ドルが約140円の時代ですので、日本円に換算すると夢の制作費は16億8000万円とねります。
それだけのお金をかけて作り上げた黒澤明監督の映像美は一見の価値ありです。
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